おねーちゃんに似合いそうな下着だね

一人暮らしを始めて、3回目の日曜日。

洗濯ものを溜めがちになってきて、実家から下着を3着しか持ってこなかったことを後悔していました。

お金ないな〜
でもほしいな〜

と思いながら、ショッピングモールの下着売り場を眺めていました。

通路に面して大きく売り出されていた下着は、値札を見ると9000円。

いやいや、高い高い……と思っていたら、突然後ろから男性の声がしました。

「おねーちゃんに似合いそうな下着だね」

耳元で、からかうような若い男性の声。
いま、背後にいる……。

状況を理解した瞬間、心臓がドクンと鳴って、私は身動きが取れなくなりました。

触られたり掴まれたりするのではと思ったら、身体中に力が入ります。

3秒くらい固まっていたでしょうか。

結局、その男性は何もせずにそのまま去っていきました。

これはなんなんだろうか

ほんの数秒間のできごとだったのに、私はどっと疲れてしまいました。

恐る恐る、去っていった男性の後ろ姿を見ると、ダボダボのパーカーに黒いキャップを被って、何事もなかったかのように歩いています。

よくわかりませんが、20〜30代くらいに見えました。

「いま、いったい何が起こった?」
「からかわれた?」
「9000円の下着は私みたいな女には似合わないって皮肉を言いたかったのか?」
「いやいやそんなわけないか…」
「あんなん、通り魔じゃん」
「私が気にしすぎてるだけ?」
「これってよくあることなの?」

混乱しながら、すぐに下着売り場を立ち去り、とにかく男性と逆の方向に歩き出しました。

歩いていると、だんだん怒りが湧いてきました。

この、ただ被っただけのこれは、いったいなんだったのでしょうか。

ただただ私が嫌な思いをして、向こうは楽しかったのか知りませんが、いったいこれを、どう理解すればいいのでしょうか。

モヤモヤしたまま、結局下着を買うことなく、ショッピングモールを後にしました。

チキンタツタとレジのおばちゃん

本当は夕飯をつくる予定でしたが、そんな気も失せ、帰り道にあったマクドナルドでチキンタツタを食べました。

チキンタツタはなぜあんなに美味しいのでしょうか?

チキンタツタのおかげか、やる気が出てきたので、近所のスーパーに寄って、明日のお弁当のおかず用に具材を調達することにしました。

チキンタツタを食べたばかりのくせに、カゴに鶏肉を入れてしまう、チキン大好き人間の私。

レジにカゴを持って行ったら、レジのおばちゃんから
「これから家に帰ってご飯つくるの?」
と聞かれました。

今日はなんだか、よく声をかけられる日だなぁと思いました。

「いえ、夕飯は食べてきたんです」

「ああそうなの、それはよかった」

「帰って、明日のお弁当を作ろうと思って」

「そう〜!すごいねえ。最近はなんでも出来合いのものがあるけど、なんだかんだ手作りはいいもんねえ」

おばちゃんは軽快に笑って「がんばってね」と付け加えました。

日曜の夜にレジ打ちしてるおばちゃんの方がすごいよ、と思いつつ「ありがとうございます、がんばります」とはにかむ私。

おばちゃんのあたたかさに触れて、今日失った何かを取り戻せた気がしました。

それは、「人を信じる気持ち」のようなものだったのかもしれません。

こんなふうに書くと、美談みたいに読めてしまうかもしれませんけれど、ぜんぜん美談ではないのです。

なぜ私は、失わなければならなかったのだろうかと、ただただモヤモヤが残る経験でした。

考え続けていきたいと思います。

さいごに、こないだもらった花束を自慢しておわります。

 

itoi

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